「感じられるもの、触れられるもの――それこそが現実だ。それ以外のものは雑念に過ぎない」
港湾作業員と軍人の家系に生まれる。家業である港湾作業員になることを期待されていたが、18才で軍に入隊した。入隊後まもなくして政治的な抗争に放り込まれ、そこで模範的な活躍を見せた。さらなる訓練や闘争の経験を積んで、殊勲飛行十字章とコンスピキュアス・ギャラントリー・クロス章を獲得した。その鋭い観察眼、確かな行動力、近接格闘術によって、要人の警護に最適だ
SAS戦術に関する豊富な実戦経験と熟練度を持つベイカーは、レインボーのあらゆる任務に欠かせない人材となった。防衛対策や対電子攻撃対策を行う中で自身の能力に磨きをかけ、エンジニアとの頻繁に協働することで装置を進化させてきた。また一等准尉(連隊特務曹長)として新兵たちを指導し、尊敬を集めている。ベイカーは敏捷性の訓練や懸垂下降を続け、数々の登山記録を塗り替えてきた。
マイク・“Thatcher”・ベイカーが官僚社会に批判的なことは知っていたため、私と会うことに消極的だったのも納得だ。私は別の方法で彼に会うことにした。ベイカーは時間ができると、乾ドックにある「アイアンマギー」という船の上修理をしながら暮らしている。それが彼の「隠居生活」だ。恐らく、そこは離婚後の一時的な住まいとするつもりだったのだろうが、今ではすっかり住み着いている[…]
ベイカーは、軍人時代に優秀な成績を残した。指導する隊員からは尊敬されえいて、彼を崇拝する者たちもいるほどだ。彼の住処を訪れたとき、彼が「堅実」だと言われる理由がよく分かった。ぶっきらぼうで、飾り気のない容姿というだけではない――信用してもらうには相当な努力が必要だった[…]
沿岸の街で育ったベイカーは、水との関係が深い。彼と会ったとき、私たちはほとんどの時間を船の甲板で過ごした。冷たい海を見下ろしながら。子供の頃に紙飛行機を折った程度しか工作経験のない私としては、船などのモノ作りにベイカーがどのような楽しみを見出しているのかを知りたかった。その緻密性や、木材を加工して用途のあるものを作り出すことが楽しいのだと言った。それを聞いた私は、新兵を指導するのとどこか似ているようだと伝えた。彼は、私たちのような「インテリ」が抱く疑問など、どうでもいいのだと言っていた[…]
シェイマス・“Sledge”・カウデンは、彼にとって数少ない友人の1人だ。また、Thatcherは威勢のいい若者に手厳しいため、その彼がマーク・“Mute”・チャンダーには寛大に接していることは驚きだった。そのことをThatcherに聞いても、 「Muteは賢いガキだ」と言うだけだ。むしろ、羨んでさえいるようだった。もしかすると、ThatcherはMuteのようになりたいと思っているのかもしれない[…]
技術革新反対派とまでは言わないが、ベイカーは技術を嫌悪している。彼にとって技術とはツールに過ぎず、ハンマーやドライバーと同列にあるものだ。それに人々が依存していることが、彼をイライラさせている。江夏“ECHO”優やエマニュエル・“Twitch”・ピションと実験室で共に時間を過ごせば、その考えも変わるかもしれない。彼らは、お互いに学び合えるものをたくさん持っているのだから
– DR.ハリシュヴァ・“Harry”・パンデー。レインボー・ディレクター