「心の奥深くで、旅をしなければならないことを悟った。旅をしてみて言えることは、まだ旅をし足りないということだけ」
モロッコの裕福な家庭で育ったサナー・エル・マクトーブは、若くして旅に出た。欧州や北アフリカを訪れる中で、辺境の地への冒険を夢見るようになる。19歳の時に軍に入隊し、要塞での配属を経験したのちにモロッコ国家憲兵隊(GIGR)に加わった。そして、山岳歩兵師団と共に4度の遠征を経験し、フリントロック訓練やトランス・サハラ・対テロパートナーシップの合同任務にも参加し、その中で特殊環境における任務のエキスパートとして成長を遂げた
遠征の合間を縫って、個人的な冒険も続けた。サハラ砂漠やアジアの熱帯雨林、北極圏を横断し、アルプスを登ることができる世界有数の冒険家でありながら、任務も完璧にこなすことができる。雨が降ろうと風が吹こうと、そこが砂漠であろうと北極であろうと、彼女はどんな環境でも踏破できる。鋭い感覚と問題解決能力に優れる彼女は、まさにサバイバルのエキスパートである。自分の旅の記録をスケッチに残すという一面も持っている
サナー・エル・マクトーブのコードネーム“Nomad”は、常に動き回っている彼女の性質に由来している。彼女が唯一立ち止まるのは、スケッチをしている時とスケッチに疲れて指を休めている時だけだ。[…]両親が直面したこともないような山や地域に足を踏み入れるのは、裕福な家の出であったため、自分自身の力で何かを成し遂げたいという想いがあるからだろう。甘やかされて育ったお嬢様として扱われることが多かった彼女は、そのイメージを覆すために生きてきた。結果として、過酷な環境でも生きられる世界有数の冒険家としての地位を確立した[…]
極限の環境下における彼女の対応力は突出しており、その耐久力は軍事に関わる者なら誰もが知っている。実際、私が彼女の名前を初めて知ったのは、軍事適正評価に関する論文を通してだった[…]
彼女がGIGRに欠かせない存在である理由は明白だ。彼女は、自分のサバイバル能力は、経験を積めば誰にでも身に付けられるものだと言うが、それは彼女なりの謙遜といえる。自慢することを嫌うため、そうしたことについて話さなければならない時はどうしても卑屈になってしまうのだろう。彼女はいつも難しい道を選ぶ… 写真の代わりに絵を描くのもそうだ。正直に言うと、私は彼女の精神性に憧れを抱いている[…]
入隊してすぐに要塞に配属され、ジャラール・エル・ファッシの指導の下、様々な訓練を受けた。また異なった状況で2人が力を合わせる姿をぜひ見てみたい[…]
彼女は冒険の中で、ケニアのマサイ族やシベリアのネネツ族など、多くの異文化と出会い、独自に文化交流の術を磨いていった。世界中のスペシャリストが所属するレインボーシックスの中でも、彼女ほど自分自身の目で世界を見てきた人物はいないだろう。今もなお、南極大陸を自分の足で横断する最初の女性になることを夢見ているが、彼女ならその夢を叶えることができるだろう。ただし、無事に帰還することを願わずにはいられない。彼女は負傷を名誉として捉える癖がある。自分が甘ったれたお嬢様ではないことを負傷によって証明したがる性格には憂慮せざるを得ない
– DR.ハリシュヴァ・パンデー