「悪魔は細部に宿る… 俺と一緒だ」
ボストン出身のエリック・ソーンは複数の言語が飛び交う家庭で育ち、上位2%に数えられる高い知性を発揮した。高校卒業後はアメリカ陸軍に加わり、短期間で昇進していった。ダリー語を学び、諜報部員になると、カブールで外国人記者、冒険家、犯罪者に扮して活動した。ソーンは一部のクラブでは有名人で、ブズカシの名騎手としても地元住民から知られている
ソーンは、地域の専門家としてザ・ユニットに招かれた。部隊に参加した後も国に残り、情報収集、ネットワーク構築、敵の追跡を続けた。カブールの状況が悪化するとソーンはアメリカ人を見張るようになり、必要に応じて力を貸し、危険から救った。ソーンが行方不明になったある記者の調査を始めると、ザ・ユニットはソーンと連絡が取れなくなった。消息を絶って2年が経過した頃、ソーンはある反乱勢力を壊滅に追い込めるほどの情報を持って再び現れた。消息を絶った理由については謎が残るものの、責任は免除され、証言は機密扱いとなった。やがてこの作戦の成功と、ソーンの専門性がシックスの関心を引くことになる
エリック・“Maverick”・ソーンのことは、彼が消息を絶つ前からよく知っている。彼は諜報部員の間では“現地人になった”スパイとして有名だった。極めて高い知能で相手の考えを読む癖は周囲の人間を遠ざけたが、一度カブールやブズカシのことを話し出すと、止まらなかった[…]
あっちではラブレターの代筆を生業にする老人がいるそうだ。彼がアフガニスタンに行ったことに何ら驚きはない… あそこには人を惹きつける文化がある。現地の外国人はクラブでパーティ三昧、レストランでも酒浸りになっていたが、ソーンは最悪の展開を予見していた。西洋人がターゲットになることを。彼は他の誰よりも現地の状況をよく理解していた[…]
ソーンは幼い頃から、異常なまでの量の情報を吸収できた。同年代の子どもなら即座に思考停止するような量の情報を、すべて区分化・分解することで吸収した。彼が感情を表に出さないのは、その影響もあるだろう[…]彼の両親は優しかったが、非常に厳格で、近所を探索することすら許さなかった。彼が陸軍に入隊したのはそれが理由だろう。夢でしか見ることのできなかった世界を、自ら体験したかったのだろう。カブールが彼をあそこまで惹きつけるのも無理はない。彼は離れた場所に行くことで自分の殻を破った。彼の頭は私たちと共にあっても、心はまだカブールにある気がしてならない[…]
ソーンは見て、聞いて、分析する力に優れ、それによって発揮される共感能力には目を見張るものがある。誰もが彼に心を開くからこそ、あのような仕事をしながらカブールで生き延びられた[…]失踪に関しては、まだ報告書を確認している段階だ。まるで恐ろしいホラー小説のような内容だが、この体験で負った傷は、彼のアフガニスタンへの思いをさらに強めたように思える。あのタトゥーは現地での体験を忘れないためのものなのだろう
– DR.ハリシュヴァ・パンデー