「自分が何者であるかに言い訳は通用しない。自分自身を小さくするのは意志の弱さだけだ」
チョンクワンオウ(ジャンクベイ)で生まれ育ったリュウは、父親と共に造船所で働きながら、旧式のタンカーから原材料や部品を集める青年期を過ごした。有害物質に囲まれた環境で、それらが同僚たちにどのような長期的影響を与えるかを見て育ったリュウは、毒の効果と人体への影響について深い知識を得た。また、当初は副業として雲南省や広西自治区での地雷処理にも従事していたが、その能力と勇敢さが香港警察の職員の目に止まった。リュウはその後、爆発物処理班(EOD)での職務に当たりながら、化学や科学捜査の勉強と激しい現場訓練を続けた。化学、生物学、放射線学および核の脅威に精通するリュウは、レインボー部隊のCBRN部隊結成時の第一選択肢だった。現在も、空き時間を利用して地雷処理のボランティア活動を行っている
リュウ・“Lesion”・ツェー・ロンは、その控え目な存在感によってそう目立つタイプではないが、それでもチームメイトからは大いに尊敬の念を抱かれている。リュウは他者に注目されなくとも全く意に介さない。むしろ、私がそのことを指摘すると彼は笑っていた。任務中の彼は、集中力を切らすことなく、迅速に状況判断を下すことができる。普段は穏やかな口調ながら、毒舌家という一面も持っている
貧しい家庭で育ったリュウは、理性的にならざるを得ない少年時代を送った。今もなお、シンプルに生きることを好み、金と時間は意味のあることにしか使わない。リュウは、自分の手に負えないものに対して腹を立てるようなことはしないと言う。彼が好戦的な人間でないことは、私の目から見ても明らかだ[…]
率直に言って、彼はゾッとするような環境で少年期を過ごしている。有害物質による健康被害のリスクを常に抱えており、鋼鉄の解体による怪我の危険もあった。そのような環境で育ったにもかかわらず、リュウの過去の記憶はおぼろげで、過去の悪い出来事に対しても、ここまで生き延びて来られた幸運に感謝しているようだ。彼の楽観的な性質は、劣悪な環境で生き抜くために備わった生存本能なのだろう。しかし、リュウは私に気を使わせたくないのか、そこまで酷い環境ではなかったと口にした。父親と共に朝日を浴び、水遊びをしたり、長い昼休みをとって釣りをしたり、良い思い出もたくさんあると話してくれた[…]
リュウは今も生まれ育った場所の近くに住んでいる。それはただの懐古主義によるものではなく、その場所の過去の姿を知っていることや、時の流れがどのようにその姿を変えてきたのかを把握できる満足感があるのだろう。リュウは、自分もジャンクベイも良い方向に変化していると言い、未来に向けてこれから先も改善していけると信じている
リュウはキャリアの当初から今に至るまで、恵まれない地域でのボランティア活動を行っている。その専門知識と技能を活かして、これまで数万発の地雷や不発弾の撤去に貢献している。また、レインボー部隊の技術開発担当者と相談しながら、オリヴィエ・“Lion”・フラマンやレラ・“Finka”・メリニコヴァと共に、CBRN対策部隊に最新技術を導入する計画を進めている
– レインボー・ディレクター、DR.ハリシュヴァ・“Harry”・パンデー