「配られたカードを持ち続ける必要はない」
チェルノブイリの北に位置するベラルーシのホメリという街で生まれたメリニコヴァは、先天的に障がいを抱えた子供たちに囲まれて育った。自身も病気を抱えていた彼女は、大人になったら自分でその治療法を見つけ出すことを決意する。メリニコヴァはノボシビルスク州立大学(NSU)で細胞学と遺伝学を学び、最終的に分子生物学の博士号を取得した。その後もNSUのバイオテクノロジーおよびウイルス学の研究室に籍を置き、基礎臨床免疫学研究所と共同で、自身の病気も含めた様々な病原体や神経障害の治療法の研究に従事した。メリニコヴァの自立駆動型モノマーモーターに関する画期的な研究により、医療科学と軍事技術は現在も進化を続けている。彼女の研究はスペツナズのオペレーターらを有害物質から救い、その功績をもとに名誉勲章を授与された彼女は、それをきっかけに新たな可能性に目を向けた。彼女は軍に入隊し、スペツナズのCBRNスペシャリストとなった。テロ対策ユニットとの合同演習において、メリニコヴァは化学兵器の専門家として突出した活躍を見せた
レラ・“Finka”・メリニコヴァは行動的な人間だが、その慢性的な病気によって過去の報告書では目立った存在として認知されていない。これは非常に残念なことだ。彼女が初めて面談のためにコーヒーとクロワッサンを持って私のオフィスに入って来たとき、その溢れんばかりのエネルギーが部屋中を駆け巡るのを肌で感じた
メリニコヴァは自身の病気について話したがらないが、本人が頭の中で常にそれを意識していることは明らかだ。彼女のフィットネストラッカーは定期的にリマインダーを通知し、水筒の水は常に満杯にしている。あまり長く座り続けたり、立ち続けることも好まない。彼女は常に計算をした上で行動している。決して落ち着きがないわけではない。ただ、その体を守るために細心の注意を払い続けているのだ[…]
健康管理をしっかり行ったからこそ、メリニコヴァは今ここにいる。彼女はそのプロセス(あるいは儀式と言ってもいい)によって、高度な身体能力と精神バランスをものにした。全くもって正しいアプローチであり、彼女もそれでうまくやっている。だが私が懸念しているのは、その注意深い秩序に混乱が生じた際にも正しく対応できるのか、という点だ。儀式的なコンセプトは保持しつつも、そこにもう少しだけ幅を持たせたほうがいいのではないかと考えている[…]
病気との切っても切れない関係により、メリニコヴァは障がいや不能が個人のアイデンティティに与える影響について独自の考えを持っている。彼女の研究は、自身の覚悟だけでなく、その罪悪感も原動力としている。彼女は全員を助けられないことを知っている。これは彼女の精神状態を保つためにも、決して忘れてはならない事実だ。結局のところ、私たちは誰もがただの人間なのだ[…]
彼女はロシアの特殊部隊のメンバーやレインボー部隊との強い絆によって、より強く、その集中力を切らさないようにしている。それを実現するのにどれだけの献身が必要なのか、仲間たちはよく理解している。常に表面的な意見が一致するというわけではないが、仲間へのメリニコヴァの献身性が揺らぐことはない[…]
最も印象に残っているのは、メリニコヴァの笑い声だ。病気のことを忘れてしまいそうになるほどの明るい笑い声だ。私はそのような屈託のない喜びの瞬間を増やすように言った。あらゆる決断を慎重な計算に基づいて下す彼女には、自分自身を驚かせるような瞬間が何よりも必要なのだ
– レインボー・ディレクター、DR.ハリシュヴァ・“Harry”・パンデー